第1章

10/10
前へ
/10ページ
次へ
痛みで一晩中寝られずに、朝を迎えた。 「うー」っと唸るように必死に痛みを耐えて過ごした。 右下に変えたあとは、上を向いて、左下に変えてと、ベッドサイドの手すりに必死に捕まりながら、寝返りをうって、先生のいう癒着というのも防げたのではないかと思う。 熱も抗生剤が効いたのか、いっときは、40℃を超していたようだが、いまは、37℃代後半までさがっている。 昨日、お腹を切ったばかりだというのに、先ほど看護師がきて、ベッドの背もたれを少しあげてくれたから、微妙な角度で頭を起こして寝転んでいる。 歩行練習の前に少しずつ、上体を起こしておくようにとのこと。腹筋に力をすこしでも入れると激痛だから、寄りかかっていることしかできないけれど、歩けたら、歩けて一人でトイレに行けるようになったら、カテーテルをはずしてくれるのだそうだ。 不快な管は、一刻も早く抜いてほしいから、頑張るしかない。一晩中、お腹の痛みに耐えたんだから、今日のほうが、きっと、大丈夫。 早く、歩けるようになって、そしたら、早く、赤ちゃんのお世話をするんだから。 助産師さんが、 『赤ちゃん、ミルク上手に飲めてますよ』 って、朝も教えてくれたから、どんな顔して飲んでるのか、早く見に行きたいと強く願った。 ようやく、歩行訓練の時間になり、最初はベッドの脇に座るよう言われて、寝てる態勢から、起きあがるのは、少し動くだけで、凄く痛いけど、必死にベッド脇まで移動した。 それから、ベッドから降りて立つのは意外に耐えられた。 点滴の吊るしてある棒に片手を力任せに立ち上がって、病室の中を、ゆっくり一歩、二歩、三歩、四歩と歩いてみせたら、看護師が、 『凄い!凄い!問題ないね。もうトイレに行けそうだね、カテーテル外しましょうか』 と、すんなり歩行訓練は、合格を貰えた。 カテーテルは、外して貰えたけど、トイレに行きたくなくても、早めに出発しないと、途中で間に合わなくなるくらい、ゆっくりしか歩けてないけど、とりあえず移動することができるようになった。 最初は、一緒に付き添ってくれると行ってくれたので、早めに、呼び出しベルで呼んで、看護師と並んで歩いて、結構な距離があるトイレまで廊下を歩いて行けた。 途中、ガラス張りのナースステーション隣の授乳室わきに、ベビーベッドが五台並んでいて、その中に私の赤ちゃんが見えた。 白のガーゼの肌着と、掛けてあるブルーのバスタオルを足で蹴飛ばして、見えるスネに、カタカナの黒い油性ペンで書かれた私の名前が見えてから、すぐにわかった。 やっぱり丸見えで、あとで面会にきてくれた彼に、文句言わなくちゃ。 でも、おかげですぐに見つけられたから、きっと、彼は、『俺のおかげ』って笑わせるんだろな。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加