第1章

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個室にベッドが運ばれたあとは、完全に目が覚めた。 背中から管を通している先にある部分麻酔のボトルを手渡されて、先端にボタンがあることと、押して自分で麻酔を注入するための説明を受けた。 「あと、一時間くらいしたら痛みが出てくると思うから、痛みがでてきたら早めにボタンを押していいからね。」 お守りのように、ボタンに手が一人で届くか確かめて、麻酔の液の入ってるボトルを枕のすぐ隣に置いた。 「ご家族を、呼んできますね。」 と看護師が出て行った。 寝たきりの私。 足には血液循環ポンプが巻き付かれていて、手術時の麻酔の影響でなのか、軽く痺れている。 部屋に一番に入ってきた彼が、 「大丈夫?おつかれさま。」 と心配そうにベッドまで近づいた。 続いて両親達も個室へ入って後方で様子を伺っている。 「大丈夫だよ、まだ麻酔が効いてて痛くもないよ。」 と言うと、彼が「お疲れ様」と、頭をなでてくれた。 「赤ちゃん見れた?抱っこできた?」 「さっき赤ちゃん俺だけ抱っこさせてもらった。めっちゃ小さいね。怖かった!今は並んで新生児室のガラス越しに、見えるとこで、赤ちゃんみてたよ。」 彼が答えると、彼のお義母さんが、興奮気味に、 「赤ちゃん男の子だったわよ!ほんと可愛かった。産まれてすぐの、へその処置するところとか、体重計で計るところも見せてくれたのよ。」 と満面の笑みで、「泣き声もすごく元気で」と笑った。 母も、 「ね!こんなとこまで見せてくれるの?ってくらい、へその緒の処置とか体重計のせて、服を着せるまで全部同じ処置室の中でみせてくれたのよ。」 私の知らない術後の舞台裏をみんなが興奮気味に教えてくれた。 「あとで病室にも連れてきてくれるって。」 「いま、今日産まれた赤ちゃんが並べられていたけど、2792グラムで今日一番大きい赤ちゃんだったよ!一番勝ってるよ!凄いよ!」 と、勝ってるとか負けてるとかないけど、 って思って笑ったら、軽くお腹がズキッと痛みがきた。 少し麻酔が、よわりはじめているのかもしれない。 とりあえず笑ったり、腹筋使わないほうがよさそうだ。
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