第1章

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彼が言う一番勝ってるって言う目標体重は、目標値そのもので、市川医師が健診で言ってた推定体重がほぼピタリだった。 なるべくお腹で、大きく育てる。 それを目標にしてきたから、こうして無事に出産出来ただけではなくて、 計画通りにいったことがすごいことだと感じる。 目の前で喜んでくれている姿をみると、やっと、やっと、本当にやっと私にも赤ちゃんを産むことができたんだって、 計画通りいかないことがほとんどだったから、やっとやっとゴールできたような気がする。 同時に、これからスタートだと言う不安と自覚もあるけれど。 看護師が、カテーテルの尿の計測にきたので、 「赤ちゃんみたいです。連れてきてもらえますか?」と聞くと、 「大丈夫ですよ。今ミルクも上手に飲めましたよ。」 と教えてくれた。 すぐにベビーベッドを押して個室へ連れてきてくれた。 一斉に待機していたみんながベッドを囲む。 「見える?」 と気を利かせてくれるお義母さん。 「私はさっき、たぶんみんなのとこに連れてくより先に、腕枕させてもらったので、実はツーショト写真撮ってます。 せっかくだから、(寝たきりの)私の代わりに抱っこしてください」 と言うと 「そーう?」 と嬉しそうに笑って赤ちゃんの手に触れた。 みんな観察や触れようとするけど、怖いのか抱っこはしないみたい。 お義父さんは、さっきから黙ってはいるけど、笑顔で写真撮影を始めた。 「ほんと可愛い」 「ずっとみてても飽きない」 「色白でお肌も綺麗だし、目も切れ長で鼻も高い」 さっきから、容姿をたくさん褒めてくれているけれど、私が褒められてるわけじゃないのに、嬉しすぎる。 それもこれも、無事に産まれてくれたから。 「パパ似かな?」 なんてよくある会話をしながら幸せな時が流れて、彼の遺伝子を引き継ぐ赤ちゃんを産めるなんて、幸せすぎる。 私が産まれた意味が、今日初めて、わかった。心からそう思えるほど。
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