第1章

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彼がベビーベッドを、赤ちゃんが見える位置に、さらに寄せてくれた。私の方へ近づけてくれて、少し顔が見えた。 ブルーの帽子を被せられ、白い肌着を着た足が、お腹までかけられていたバスタオルを蹴りあげて、足が見える。 「足もちっちゃい」 「このスネに油性マジックで名前書いてっていうから書いたんだよ。かわいそうになるから躊躇ったよ。」 と彼が言うと、母が笑い出す。 「お母さんの名前を書いてください、と言われて、ヤッチャンまさかのカタカタだったから!」 「え?普通こんな小さなところに漢字で書くって思わないですよ。でも、さっき並んてる他の赤ちゃん、みんな漢字で書かれててね、うちだけだったけど」 母達がどっと笑い出す。苦笑いする彼。 「カタカタが一番見やすかったから、まぁいいじゃないですか」 「そうね。」と、お義母さんも笑いながら答えた。 隣でお義父さんも、笑っている。 彼が、赤ちゃんの肌着を膝まで捲って、 「見える?」と見せてくれた。 細い足には私の名前が膝から下に、カタカタ5文字で、右足のスネ足には姓、左には、名が、大きく書かれていた。 「かわいそうなんて言いながらも、こんなに大きく書いたの?入院中ずっと一人だけカタカタの名前なんてやだよー」 「大丈夫、誰も見ないよ」 「看護師さん見るし、さっき他の子見たんなら家も見られてるじゃん(笑)」 「絶対、目立つし赤ちゃんの取り違え防げるね」 と彼が必死に弁解するから両親が笑っていた。
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