第1章

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静かになった部屋で一人になると、足に巻き付いた血液循環ポンプが吸ったり吐いたりする音だけがやけに耳につく。 みんなで楽しく食事に出かけたことを思うと羨ましくも思うけれど、昨日からほとんど寝れなかったから、体は疲れているし、来客があると、ほんの少しの気遣はしていたようで、どっと疲れていたことに気づいた。やはり一人になりたかったんだと思う。 同じ経験をした姉の様子を熟知している母が、術後の私の体力まで考えてくれた絶妙な対応に、流石だなって有り難さを改めて実感した。 携帯を見ることもせず、昨日からの寝不足もあって、頭がボーッとしてしまい、今朝からの事を現実の出来事として整理している時間が必要だった。 それは産後のホルモンのせいなのかわからないけど、物凄く色んなことが走馬灯のように思い出されて。 どれくらい時間がたっただろう。 頭はぼーっとするのに、ちっとも眠くないし、不快な尿管カテーテルが気になって足さえ動かせない。 ポンプや、カテーテル、傷周りの腹帯など、身体に巻き付いている物が全て不快で取っ払いたい気持ちを堪えて、ただひたすら長い時間、天井をみて、過ごした。 時間の経過とともに、下腹部が痛みだし、言われた通り麻酔のボタンを押してみたが、効いてるのかよくわからず、だんだんジクジクとする痛みと、生理痛よりずっと痛い子宮を握られているような経験したことないほどの痛みと、中の方傷口なのかズキズキする痛みが増してきて、色んな痛みがどんどん強くなってきて、気絶しそうになってきた。 完全に気絶して眠れてしまえば楽なのに、ぎりぎりのところで意識が飛べなくて、痛みをひたすら耐え続けた。 看護師が時折、点滴を変えにきたり、出血の具合を確認しにきてくれて、体がガクガク震えていることに気づいた。 「痛いし寒いです。」 看護師に助けをもとめた。 『術後は熱があがるので、あがきるまで温めましょう。』 発熱39度の熱が出ていて、体には電気毛布をかけてくれて、頭と脇下には、保冷剤をあててくれた。
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