第1章

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電気毛布に包まれてガクガク寒気に震えるのが治まったと思ったら、こんどは、汗びっしょりになり、暑くて暑くて喉が渇いてきた。 ナースコールで、来てくれた看護師に、電気毛布を外してもらい、着替えさせてもらった。 術後の熱が上がりきったようだ。 水だけなら、もう飲んでいいと言われた。 寝たまま起き上がらずに水を飲めるように、ペットボトルの蓋にストローつきのキャップをつけてもらって、手を伸ばせば飲めるように準備までしてもらった。  点滴をしてるから脱水になることはないけれど、お腹の傷みと、喉の渇きと、さらには、胸の痛みまで始まって、かなりしんどくなってきた。 さきほどから、麻酔ポンプのボタンを押して追加の麻酔を自分で、入れてるのに痛みが全然ひいてこない。 看護師が、 「もっと我慢しないで、たくさん麻酔のボタンを押していいんですよ。」 と言ったけれど、 「押してるけど、全然効かないです」 と痛みで余裕ない返答をしてしまった。 それならと、痛み止めの飲み薬を処方してくれた。 それでも、全然効かないくらいのお腹の痛みで、寝返りさえも出来ない。 市川先生が、術後一度きてくれて、 「なるべく癒着しないように、寝返りうってあっち向いたりこっち向いたり、寝返りで体を動かして頑張ってください。明日の朝からは歩行してもらいますのでがんばりましょう。」 と言ったけれど、 正直、数ミリ体を傾けただけで、傷口開いてないかい?ってくらい痛すぎて、切腹の痛みは想像以上辛い。 ベッドの柵にしがみつきながら、「ゔーっ」と唸りながら、やっとの思いで、ただの寝返りに数分かけて、やっとやっと左下になるように寝返りをうてた。 ふだんどこの筋肉使って寝返りうってるなんて考えたこともなかったけど、腹筋つかえないのって、かなり大変なんだなって初めて知った。 不思議なもので、術後数時間で、赤ちゃんを産んだことを、体はちゃんとわかっている、その証拠に、胸がちゃんと張り出している。 ちゃくちゃくと、体が母乳を作り出しているみたいに、両胸全体がカチカチになるほど、パンパンに張って、張った部分が熱くなっている。 それでも、お世話のする体調でもなければ、オチチをあげるという行為、母乳を出すという、やり方すら初ママにとって、わけがわからず、幸い母乳育児推薦の病院なので、助産師が明日から教えてくれることになっている。 そもそも赤ちゃんのお世話なんて、いまの私には正直無理だよ。 普通分娩なら、今頃、お世話が始まってるのだろうに、帝王切開での出産は、正直、お世話どころではなく、自分の事でせいいっぱい、いや、さっきから、術後の出血の汚物替えのオムツ交換(産褥ショーツ替え)まで看護師にさせて、自分がお世話してもらってるよ。
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