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3章 ホテイアオイ
姉の結婚が決まる少し前、姉と二人で久しぶりに町まで出かけたことがあった。買い物に付き合わされ、帰りに喫茶店に寄った。古い商店街に完全に溶け込んでいる、喫茶店だった。その日も、私はアイスコーヒーを注文したが、姉は冷えた日本茶を注文していたのをよく憶えている。
「何故、人は結婚するのだと思う?」
姉が私にした意外な質問だった。
「その人のことが好きで、ずっと毎日一緒にいたいから」
私は当然のごとく、ごく当たり前の答えを言った。
「それだったら同棲でいいんじゃない? 内縁の妻っていう表現の仕方もあるわ」
「確かにそうだけど、結婚してないと世間的にも不安になると思うの。子供が生まれたとしたら、子供にとって未婚のお母さんじゃ、子供が可哀相でしょ?」
私は反論したが、姉の予想外な言葉に少し言葉が詰まった。姉は、結婚に拘っていたのではないか。
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