3章 ホテイアオイ

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「私が言いたいのは、もっと掘り下げた意味よ。女にとっての結婚ってなんだろうってこと。ただ、ずっと家にいて、毎日家事をして、いつ帰るか分からない旦那の帰りを待って。それから子供を産んで……子供が生まれたら子育てと家事に追われる毎日……。こんな生活になんの意味があるんだろうって」  そう言うと、姉は微笑んで、上品そうに両手で湯呑を持ち日本茶を一口を飲んだ。 「どうしたの、お姉ちゃん。あの時、お嫁さんになるって言ったじゃない。何かあったの?」  私は、今までからは想像出来ない結婚観に姉の顔を覗き込んだ。姉は昔から、すべてにおいて前向きな考え方だった。だから、それが姉の言葉とは信じられなかった。 「ううん。私のことじゃないわ。結婚した友達の話よ。結婚した友達は全員、同じことを繰り返すわ。たまに会っても旦那の愚痴ばっかりで、自分の環境を悲観してる」  姉は首を横に振り、笑ってそう呟いた。 「だけど、私はそうならない。私なりの結婚する目的をちゃんと見つけたから。それに見合った人も見つかったしね」  姉は笑顔で付け足した。  そして姉から近々、結婚するという報告を受けた。  少し姉と町を歩いた後で、二人でバスに乗った。こんな田舎では、バスは一日に数えるぐらいしか通らない。一つ逃してしまうと、一時間も無駄な時間を過ごしてしまうことになる。     
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