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なるべくなら、人と会うことを避けたいと思う。
私は月経のときは息を潜め、死んでいるように家でひっそりと過ごす。家族にも会いたくはない。特に姉には。
もしかしたら、その激しい痛みの予兆や間違いなく来る月経期の苦しさから現実逃避したいがために、池の中に入りたいのかもしれない。
これから来る苦痛を忘れ、服を着たまま、ただ池に入って水草に触れたい。この手に掴み、水の中で眺めていたい。そうすると、日々の煩わしさや嫌なことも忘れることが出来るような気がする。
池の水面には、隙間なくボタンウキクサとホテイアオイが絡み合うようにして浮いている。それほど大きくない池の水面には、びっしりと二つの水草が浮いている。他の水草もあるのかもしれないが、二つの水草の数が多すぎて見つけられない。
私は池のほとりにしゃがみ込んで、この二つの水草を眺めている。
ボタンウキクサとホテイアオイ。この池で幾度なく、枯れては生まれ、毎年、絶えることなく繁殖を繰り返している。今浮いているのは、この池に住み始めてから、何代目なのだろうか。私が幼い頃から、この池の水面は何一つ変わっていない。よく私と姉は、祖父母にこの水草に例えられた。
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