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「それが怖くて結婚を焦っているの? でもお姉ちゃんは、若く見られるし、今も綺麗じゃない」
「ううん、そうじゃないわ。そんな理由で結婚するわけじゃないわ。出来ることなら、このまま……いや、もっと若いときの姿でいたい。でも、そんなの無理なことって分かってる」
そう言うと、姉は手を伸ばし、池のボタンウキクサの葉を千切った。私は、黙って姉を眺めた。
「でも、ホテイアオイの花のようにずっと綺麗でいたいの。死ぬまでずっと。でも、ゆっくりだけど、少しずつ確実に変わってきているわ。みんなは分からないかもしれないけど、さすがに私には分かる。シミも出てくるし、白髪も生えてきている。笑うと皺が昔より多くなった気がする。まだ目立たないけど、これから増えていくのは間違いないわ。見たくもないものが……今まで存在しなかったものが私の体に存在しているの」
姉は興奮して言った。よくは見えなかったが、きっと左目は蠢いていただろう。
「あなたも薄々は感じてるでしょ?」
姉が突然、振り返って叫ぶように尋ねた。やはり、左目が中央に寄っていた。斜視になった姉が興奮して私を問い詰める。
「そ……そんなことはないと思うよ。お姉ちゃんは美しいし……」
いきなり予想しなかった展開に私は動揺した。
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