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小さいときから、極上に美しくて、みんなにちやほやされてきたのだから、その美貌が崩れていき、まわりの評価が変わるのが嫌なのだろうか、と思った。私には、姉の自己愛と加齢に対する恐怖が理解できない。だけど反論すると、姉は怒るだろう。
姉が初めて見せた弱い一面だった。もしかしたら、幼き頃にそんな一面を私に見せたこともあったかもしれないが、記憶にはない。もしあったとしても、いつも強気な姉の感情の中で霞んで消えていったのだろう。
弱気な姉だろうが、従順にいかなければならないと思った。そう、昔みたいに。
それからは、私は何も言わずに、姉の後ろ向きな質問にすべて否定で返した。
「老いていくのを止めるのは、さすがに無理だと理解したわ。でも逆らうことは出来ると思うの。だから、私は少しでも努力して足掻くことにしたわ」
そう言うと、姉は微笑み、私は状況が変わったことを確信した。本心は、頭を傾げるばかりだったが、ここで意見してはいけないと感じので何も言わなかった。姉の想いに同調するのだ。姉の機嫌を損なえば、また左目が中央に寄ることになる。
つまり、自分の美貌のピークは過ぎ、これからは徐々に下がっていく。決して上がって来ることはない。だから、もう結婚をするのだ、そう聞こえてくる。そんな考えしか出来ない姉を少し悲しく思った。
「足掻くってどういうこと?」
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