3章 ホテイアオイ

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「最大限の努力をしようと思うの。何よりも、年を取らないことを一番に考えた生活をするわ。肌や髪、体型だったり、服装だったり、今のスタイルを少しでも維持できるように徹底して生きていくことが、一番の幸せだと思うの」  姉は嬉しそうに言った。まるで、それが一番正しい選択だと言わんばかりに。確かに、外見を一番気にする姉にとっては、最も重要なことなのだろう。私は、一応頷きはしたが、馬鹿みたいだと思った。きっと姉は、いつまで経っても幸せになれやしない。何が幸せなのかも気付かないだろう。いや、そのことに気付かないことが姉にとっては幸せなことなのだろう。    明確に私と姉は違う種類の人間だと確信した瞬間でもあった。 「女にとっての幸せは、昔と違ってハッキリと確立しないといけないと思うのよ。もう、そういう時代だと思うわ」  姉は遠くを見つめてそう言った。視線の先には富士山がある。果たして、姉の蠢いた目には富士山が見えているだろうか。姉の言う幸せとは、きっと自分だけの幸せでしかなく、そこには家庭のことなど頭にないだろうし、姉は自己中心的な幸せで構わないと思っていると思っているに違いない。 「富士山に登ったことある?」  私は姉の横顔に尋ねた。目は見たくないので、見ないようにした。 「ないわ」と姉は小馬鹿にしたように、笑って言った。まるで登山をする人が愚かな者、と言わんばかりに。 「昔は、女は富士山に登れなかったって知ってた?」     
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