3章 ホテイアオイ

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 私は、姉の無関心さに少しイラついて尋ねた。 「どういうこと?」 「女性は汚れてる存在だから、男性しか富士山に登っては行けなかった時代があったのよ。女性は、例え男性と一緒でも二合目までしか登れなかった」 「いつの時代をしているのよ?」 「確か、明治の初期まではそうだったわ」 「でも、今はそんな愚かな思想はないわ。もし、今女性が入れない場所があったとしたら、大問題じゃない」  姉は微笑を浮かべた。姉の微笑は大人になっても、まだ慣れない。 「でも、昔は女性の地位は低かった」 「何が言いたいわけ? 私は別に富士山に興味はないわ」 「ううん、富士山のことじゃないわ。女性のことよ。富士山に登ることを禁止されてても、それでも登りたかった女性はたくさんいたと思う。でも、絶対に許されなかった。そんなことがまかり通ってた時代だから、いきなり女性解禁になったわけじゃないの。禁止されてても、それでも富士山に登った女性がいたの。きっと世の女性の地位の向上のために女性を代表して登ったのね」 「今じゃ考えられないわ。女性を制限することで、男が権力を示そうってしたわけね」  姉が呆れた風に言った。     
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