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それはそれは暑苦しい夏の土曜日の朝。最近の太陽は本当に手加減してくれない。自転車で爽やかに風に吹かれながら公民館に向かおうと思ってたのに、家を出る前から汗が体中からにじみ出てきている。
いつも土曜日になると、勉強をしに公民館に行っている。それはガリ勉だからではない。死に物狂いの浪人生だからである。
公民館では、いつも通り自習室が開放されていて、もう何人か勉強を始めていた。
鉛筆がコツコツと音を立て、ノートや参考書がパラパラとめくられる音以外には、何も音がしない。
静寂の空間をゆっくりと進み、窓際の特等席に座った。
オレはいつもこの右端の一番後ろに座っている。なぜならここが一番涼しくて集中しやすいから。
それともう一つ理由がある。
それは去年の夏。オレがまだ高校生だった頃のこと。
はじめての自習室に変に緊張していたオレは、どうにも気持ちが落ち着いていなかった。
それまで勉強に無縁だった俺は、やはり自習室に来たとしても勉強に身が入らず、ただ鉛筆を回すだけだ。
そんな中、突然目の前にかわいいと言うより、綺麗な女の子が現れたのだった。
「あの、隣、いいですか?」
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