あの、隣、いいですか?

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一瞬、固まってしまった。  その子は、近くの高校の制服をきちんと着ていて、オレが前々から好きなアイドルに似ていて……。  その姿はオレの心に焼き付いてしまった。  そう。いわゆる一目惚れだ。 「えっ、あっ、どうぞ」  広げっぱなしのノート達を端っこの方に寄せる。と同時に、女の子が隣の椅子に座った。今気付いたが、綺麗なのに加えてなんだか雰囲気というか柔らかなオーラが漂っている。どんどん彼女の世界に引きずり込まれるようで、それがまた心地良かった。  それからと言うもの、いつのまにか勉強目当てではなく、彼女目当てで自習室を訪れるようになっていった。彼女は必ず土曜日だけ自習室に現れる。だから、オレは土曜日が来るのが待ち遠しかった。  自習室にいる時間中は、ずっと勉強してるふりをして、チラチラっと彼女の横顔を覗く。苦手そうに高校数学に頭を悩ませている時、たまに目があってあたふたしたりする。それでも目があった時に嫌がりもせず、逆に微笑み返してくれる。それがなんだか無性に嬉しかった。  
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