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しばらくして、私はまたクスっと吹き出してしまった。もう自分でも自分のキャラがわけ分らなくなっている。そんな私を見ながら、彼はますます泣きそうになっている。なんだこれ。仕方がないから私の方から口を開いた。
「独身同盟、撤回ね。次は何同盟になるの?」
そう言って私は彼のコートのポケットに片手を入れた。予想通り彼は携帯電話を握り締めている。あったかくって安心する。手の先だけじゃなくて、そこを伝って体が熱くなっていく。
「え、んん、わかんね。わかんねぇ。わかんねぇよ」
彼は泣きそうに引きつっている顔で無理に笑顔を作っている。いや、これこそ心からの嬉しさなのだろうか。こういうのも不器用な彼らしいかな。
「そっか。わかんないか」
私は遠くイルミネーションの方に視線を移した。もう見えないけど、なんとなく。彼は恥ずかしそうにまた違った方向を見ている。そんな彼をよそに、私はコートのポケットの中でこっそり手をつないだ。私の心の中のイルミネーションは、一気に点灯した気がした。彼の方もそうだったらいいな。夜風の冷たさは今ではもう昔のことだった。
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