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そのうち本当に空気まで冷たくなってきた。相変わらず微妙な距離感の私たち。さすがに今日は失敗だったな。わざとすましたような表情をして空気をごまかすくらいのことしかできない。一応彼は私の住んでいるアパートまで送ってくれるらしいのだが、逆に申し訳ない。そうしているうちにアパートが見えてきた。よし、軽く謝ってすっと帰っちゃお。
「じゃ、ここだから。今日はごめんね。でもありがと。じゃね」
ふぅ、と一息つき、彼に背を向ける。これで一件落着。と思ったその時、彼に呼び止められた。
「ちょっと待って。あのさ……」
「ん?」
急なことで戸惑いながら振り返った。すると私の振り返った表情がおかしかったのか、彼は引きつった表情で不器用に口を開きだした。
「あのさ、ちょっと早いけど、独身同盟、撤回しない?」
する必要もなさそうだが彼は身振り手振りを加えながらそう言った。引きつっているというよりもはや泣きそうなその表情に、私はくすっと笑ってしまった。
「え、あのそれどういーー」
「俺と付き合ってほしい」
私のセリフに完全にかぶせながら、彼は叫ぶようにそう言った。なんてこった。こんな雰囲気で告白してくるなんて。嬉しいという感情が押し寄せてくる前に驚きが押し寄せてきてキョトンとしてしまった。目の前に彼がいて、その彼が私に告白してきている。それはわかる。でも、でも、なんだこれ。私が慣れていないのか、それとも彼が慣れていないのか。はたまたお互いに慣れていないのか。二人共お互いの目を見ながら固まってしまった。
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