つれづれ

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 夫との結婚が決まったとき、それを最初に報告したのは親友の陽子だった。  半年の交際の後にレストランでプロポーズされ、その足で踊るように陽子の部屋へ行ったのだ。  当時、彼女は一人暮らしだった。  私はちゃんと夫が好きだった。  ちゃんと、と言うのは変かもしれないが、結婚して数年たち、愛の冷めた妻たちの常套句は「もともとそんなに好きで結婚したわけじゃないし」だ。  それを知っているからあえて言う。  私は彼が好きだった。だからプロポーズされて、とても嬉しかった。  興奮し、浮かれた気分で、私は陽子に電話して部屋に押しかけた。 「私、結婚するよ!」  そう報告すると、陽子はにっこり笑って、「おめでとう」と言ってくれた。 「よかったねあゆみちゃん、幸せになってね」と。  金曜の夜だったので、私はそのまま陽子の部屋に泊めてもらった。2人で少しお酒を飲み、お菓子を食べて、セミダブルのベッドに一緒に横になって明け方まで話した。 「友人代表のスピーチは陽子に頼むからね」  私がまだ彼とも話していない結婚式の構想を語るのを、陽子はにこにこと聞いてくれた。スピーチで披露するエピソードとして、どれがいいかなと、2人で思い出を語り合った。  カーテンを開けるとあまり絵にならない半月が出ていて、陽子はそれでも笑顔で振り向いた。 「月が、きれいだね」  そう言って笑った。  映画のワンシーンのように、きれいだった。
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