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わかきひの
陽子とは高校からの親友だった。同じクラスになったことはないけれど、当時は超マイナーだったかるた部で、毎日一緒に練習したのだ。
初めて会ったのは、仮入部のとき。
まず新入部員同士で実力を見ます、当時の部長にそう言われ、私は初めて陽子と対戦した。陽子は、私よりも速く、強かった。
速さに自信のあった私は、おっとりとした印象であまり強そうには見えなかった陽子に負けたことにショックを受けた。先輩にちやほやされる彼女に、醜い嫉妬さえした。
けれど対戦の後に陽子に声をかけられ、名前の通り陽だまりのような笑顔で
「楽しかったね。これからよろしくね」
と言われ、気だての良い彼女を嫌っていることなどできなくなった。
私たちは、すぐに仲良くなった。
その年の夏、陽子が百人一首など一首もまともに覚えていないと知ったときは、負けた時よりもずっとショックだった。
彼女は古文や和歌に全く興味がなく、ただ決まり字だけを覚えて飛び出す、スプリンターのようなかるた取りだったのだ。
短歌や俳句の世界が好きだった私は、陽子にもその良さをわかってもらいたくて必死になった。そして百人一首のほか、万葉集や新古今和歌集から好きな歌を拾っては、彼女に紹介した。
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