嬉しくない出会い

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嬉しくない出会い

私が中学3年の受験の年。私は彼に出会った。 「僕は認めないし」 その一言で私の高校生活は全寮制の学校に決まった。 母が再婚することになり、再婚相手の家に初めて行った日、小学生のガキに玄関入るなり言われた一言だった。 高校受験までの半年だけ、そのまま母と暮らし、私の受験が終了すると母は再婚相手の家へ転居した。高校入学から3年間、その家には一度も行ったことがない。だから私には帰るべき家がない。 大学受験があり、久しぶりにその家に行く機会があった。 本当はホテルにでも泊まりたかったけど、大学生活をどこでスタートすべきなのかも含め、お試しの意味も含めての宿泊だった。 彼は中学2年生になっていた。私もそこそこ身長は高いほうだと思うけど、彼も背が伸びていて、目力のある、ちょっと斜に構えて感じの少年とは言えない大人未満の反抗期終盤の男子になっていた。 今回のお試し宿泊は彼が言いだしたことらしい。何の心境の変化があったのだろう。 全寮制の高校生活でも、休みごとに家に来るように言われてはいたけど、あれだけストレートに「No」をつきつけられては行けるわけがない。学校に事情を話して、休みの期間、一人で残るのを困惑されたのは始めだけで、後は友達のところにお世話になったり、殆ど誰もいない校舎を散策するのはそれで楽しかったりした。 もともと母子家庭で、いわゆる鍵っ子生活に慣れていた私はきちんと高校も行かせてもらえて、大学まで行けるようになったのは母の再婚相手の財力に負うところが大きいのだろうし、それには感謝している。一人暮らしはそれなりに費用もかかるしね。 とりあえず、私を認めないという義理の弟くんと最低限の接触で4年間を過ごせれば、あとは自分の稼ぎでどうにか独立できるというのが私の当初の目論見書だった。
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