高級娼館街を治めている女

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 深緋色に黒い薔薇と白いユリの着物を枯色の鶴が織られた金色の帯、正直帯以外は時代を先走りすぎた柄である。  しかし、それを着こなす隻眼を包帯で覆いキセルを咥える女は大変美人である。 「で、シマを荒らしたのはどこ。」 しかし、彼女をただの美人だと思ってはいけない。彼女はこの娼館街全体を治める主様である。しかも彼女は両刀である。 そんな彼女が治める娼館街は、ある四ヶ国の国境線沿いに不可侵条約を徹底するために、作られた。不可侵条約とされているため、彼女は各国に高い税金を払っている。その代わり、彼女の街で何かあれば、彼女の独断ですべて裁かれる。第一に彼女はこの四ヵ国の国境線に住まう少数民族で、元々娼館を営んでいたためやっかみが回ってきたのだ。不可侵条約を守るための砦なのである。 彼女はその民族の長。名はなく、名乗るときは日々違う名を使う。 「未だ分かっておりません。」 彼女はキセルに煙草を詰め、和窓の外を見つめる。彼女の傍で傅くは童顔であるが体のつくりを見るに17歳を超えているように窺える。   「そう。さぁ、こい。撫でてあげる。」
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