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花紅柳緑
▽▽▽
「沖田隊長が松田を探していたぞ。
急ぎじゃ無さそうだったけど」
「おい、松田じゃなくて松田隊長だろ」
道場で手合わせをしていた俺達のところに来た木村に指摘をする。
あ、そうだったみたいな顔をしているけど、悪びれた様子は無い。
「ありがとうございます、木村さん。
訓練を終えたら、総司さんの部屋に伺ってみます」
「ん、じゃあ俺は新人の隊服合わせ続けるから」
「ありがとう。
頼りにしてます、木村副隊長」
「ばっ、馬鹿じゃねえの、嬉しくないからな、そう言うの。
あ、永倉隊長、中断させてしまってすみませんでした」
その割には耳が赤くなってるじゃん。
木刀を肩に担いで、俺は改めてヒマリを見下ろした。
入隊した頃と変わらない穏やかな微笑みを浮かべているが、まさか俺達と隊長として肩を並べる日が来るなんてさ…。
いつかはそうなるのかなって、過ったこともあるけれど、やっぱり俺の中ではヒマリは庇護される人物のままで。
いまいち納得出来ていないところも、正直ある。
総司だって、あのまま自分の隊に置いておいて、ずっと自分が守り続けていたかっただろうに。
自分の腹心の一人でもある木村と塚本を松田隊に所属はさせたものの、栗原、広瀬、田村と半分が新人の隊だ。
俺の隊からも何人か補助役として異動させてやれば良かった…。
「永倉隊長?
私の勝ちになってしまいますよ?」
「おっ!?」
考え事をしていたから、ヒマリの殺気のない打ち込みを頭に食らうところだった。
素早く避けた俺に、ヒマリは追い討ちをかけてくる。
うーん、出来れば満点は出したくないけど、良い太刀筋だ。
どうしても筋力が劣る女だけど、隊長として認められている技量は十分にある。
結構な歴戦持ってるからね、ヒマリは。
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