上司、とける

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 弘実は、父が亡くなる前に考えてくれた名だ。男女どちらでも使えるようにと、母と考えてくれた名だ。    この時、しんでほしいと、心底思った。 「ー依頼したい。豊島毅という男を、殺してくれ」  受話器の向こうの声が、無邪気にはしゃぐように。 「なハハッ、良いですよ。じゃぁ、達成したら報酬もらいに行きますから、10万円きっかり現金ナマで用意しといてくださいねっ。でわっ」  がしゃん。  電話は切られた。  しばらく呆けていたが、大変なことをしてしまった気がした、同じ電話番号にかけ直した。  しかしー。 「おかけになった電話番号は、現在、使われておりません」  無機質な音声が聞こえてきた。  それが、つい先週の金曜のことである。    
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