正しい選択

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 朝食の後には、コーヒーをマグカップに入れる。無論、ブラックだ。テレビをつける。ニュースを見ながら新聞を広げ、お悔やみの欄をチェックする。  6時半になった。駅までは自転車で12分。駅には15分前の7時には着いていたい。服を着替え始めなければ。私は立ち上がる時に、誤ってマグカップを倒し割ってしまった。 「あ、あー、ああああ!」  本日初めてのミス。マグカップはテーブルの下で粉々になっている。  なんてことだ。  頭をかきむしり、テーブルにまだ置いてある他の食器も下へ投げつけ、粉々に割りたい衝動にかられる。どうにか平静を保ち、深呼吸を繰り返す。  帰ってきてから片付ければ良い。そうすれば電車に間に合う。落ち着け、落ち着けと自分自身に言い聞かせた。  苛立ちを抑えながら、素早く着替える。マグカップを割ったことで動揺して、朝の支度に遅れが出た。  6時50分に家を出た。駅まで12分かかるのだ。7時に駅に着くには、2分どこかで調整しなくては。自転車に乗ると、回転が速くなるよう強く漕いだ。駅までには信号が3つある。すべて青信号で行ければ、2分の遅れを取り戻せるかもしれない。  1つ目。青だ。急いで渡る。  2つ目。青だ。しかし、点滅している。やはり急いで渡る。  3つ目。また点滅している。ラストスパートと、力強く漕ぐ。     
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