上司、とける

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「共犯者にならない人に、僕への連絡手段なんて取っておかせないよう。あ、ちなみにこの通話は録音させていただいてまっす。だから、あなたが僕に依頼した時点で、共犯者だから」 「依頼って、その、まさか」 「わかってるんでしょ? 殺人だよ」  作られた人工的な声質でも分かる、冷えた声色だった。背筋がぞくりとする。 「そんな」 「あ、怖気ついちゃった? 良いんだよ? 頼まないでくれても。この電話のことと、僕からのメールを消去して忘れてくれれば。でも」  そこで一旦区切り、勿体ぶったようにその名を告げた。 「と、し、ま、た、け、し、さん」  口元がピクピクと引きつった。  豊島毅。私の職場の上司ー。  こいつに浴びせられた言葉の数々が、荒波のように私の頭の中で暴れた。 「男のくせに、電話の窓口部署を希望してくるなんて、恥ずかしくないのか」  男性のコールセンター職員だっている。視野の狭い、偏見野郎。 「男のくせに、こんなクレーム1つマトモに対応できないのか。電話なんか、変わらんからな」  上司としての役割を果たさない、無責任野郎。 「男のくせに、残業もせんのか? 時間? 電波時計? 会社の時計が始業と終業の時間を決めているんだよ。バカが」  お前がバカだ。屁理屈野郎。 「男のくせに、ひろみ、なんて。だからお前は女々しいんだな。名前をつけた親が悪い」     
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