上司、とける

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上司、とける

 8時に会社のエントランスに入る。 「おはようございます」  受付の女に声をかける。今年から来たこいつは挨拶を返さない。しかし私のルーティンの1つであるため、構わず毎日声をかけている。  エレベーターで3階へ。私の仕事場だ。 「おはようございます」  仕事場に入る時も、挨拶をする。こちらはきちんと挨拶が返ってくる。  私の仕事は、とある小さなメーカー会社のお客様電話問合せ窓口の部署。規模の小さなコールセンターのようなものだ。  問合せ受付時間は9時から16時45分(12時から13時までの昼休憩有)と決まっている。他の社員と同じく8時15分から17時までの就業時間だが、残業なく帰れる。時間通りを好む私に合った仕事だった。  時間外にかけてくる日本語の不自由なお客様もいる(時間外は自動音声にでもして電話がならないようにするべきである。これだから小さな会社は)が、私は出ない。話の途中でも、16時45分が来てしまえば、失礼させていただいている。上司には何度か注意されたが、昨日はされていない。  今日の、お悔やみ欄ー。 「ねぇねぇ」     
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