ブルーバードは振り向かない

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 流星が写真を見せてくるようになったのは大学四年に進級してからだった。昼休みに食堂でぼーっとしていると、流星がおもむろに写真を目の前に並べてきた。もちろん全て後ろ姿の写真だ。最初のうちは月に一回くらいのペースだったが、最近はほぼ毎日見せてくる。そして今も、嫌になるほど見慣れた後ろ姿の写真を見せられている。 「あのさ……」 「おは玲二。流星もおはよ」  尋ねようとした時、お気楽な声が割り込んできた。気が付くと大貴がテーブルの脇に立っていた。俺の時だけふざけた挨拶をかまして能天気に笑っている。 「俺、内定決まった!」  大貴が満面の笑みを浮かべて言った。流星は大貴を祝福していた。でも俺は素直に喜べなかった。むしろ不安の方が大きい。アホの大貴に先を越されてしまうなんて。 「玲二、顔怖っ」  大貴に言われてふと我に返った。無意識に睨みつけていたらしい。 「まぁ、お前だけだもんな。進路決まってないの」  大貴が言った。俺はうるせぇよ、と大貴を小突いた。だが、確かにその通りだった。  流星は大学院進学が決まっているし、大貴もついに内定が決まった。俺だけ何もかもがうまくいっていない。就活をしているものの、落ちまくって何社になるかわからない。未来が見えたらな、せめて就職先だけわかればこんなに苦労もせず終われるのに、そんな考えが最近はずっと頭の中に充満している。  俺は鞄の中から書類を取り出した。いくつかの質問事項がある中で、一番に目が行ったのは 『あなたの夢について語ってください』  大ざっぱすぎて何を書いていいのやらわからない。無論、その欄は白紙だった。俺には今のところ、夢も希望もない。流星と大貴を見た。違う世界の住人になってしまったように感じた。夢も希望もある奴はキラキラしていて眩しい。そういえば、こいつらの夢って何だろう。聞いて多少パクってやろう。
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