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「ええっと、部屋ん中にいたら、窓の外に蝉が向かってくるのが見えて、網戸あるから大丈夫だなって思ってたら、網戸がこんだけしかなくて……」
「もういいわ!」
大貴が指で網戸の幅を示しているのを遮って、俺は言った。
「え~まだ途中じゃん」
大貴は不服そうに頬を膨らませていた。まともな模範解答がまったく出て来ない。イライラしてきた。
「同じボケされても全然面白くねぇんだよ! てか、説明下手過ぎだろ、バカ!」
「あー、バカって言ったほうがバカなんだぞ!」
「じゃあ、二回言ったからお前の方がバカだな」
「うるさい! バーカ、バーカ」
「バーカ」
「バーカ」
「君たち、時間の無駄って言葉を知ってるかい?」
俺と大貴の言い合いに流星が水を差すように割り込んできた。流星は薄ら笑いを浮かべている。怒った時のこいつの癖だ。
「玲二、大貴君だって君を元気づけようとして言ったことじゃないか」
流星の言葉で気づいた。こいつらと話しているうちに、いつの間にか重かった気持ちが軽くなっているような気がする。
「ごめん。なんか、ありがとう」
俺がそう言うと、大貴は茶化すように笑った。流星も微笑んでいた。
「じゃっ、俺行くわ。まだ報告あるし」
そう言って、大貴は行ってしまった。
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