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そのまましばらく歩いていると、後ろから激しい音で自転車のベルが鳴らされ、反射的に二人は手を離した。
道を塞いでいた訳でもないのに、そこまで鳴らす?とは思ったけど、まあ邪魔になっていたのなら、私らが悪い訳で。
申し訳なさそうに肩をすくめて二人が歩道の片側に寄ると、後ろからやってきた自転車が結構なスピードで追い越していった。
追い越されるまでの間、申し訳なさと気恥ずかしさで、顔を隠すように下を向いていたんだけど、追い越しざまに、自転車の上からボソッと冷たい声を投げかけられた。
「邪魔なんだけど」
「あ、ごめんなさ…い」
心底嫌そうな口調でそう言われて、慌てて顔を上げると、その声の主は井上さんだった。
気づかない間に通路を塞いでいたとしたら申し訳ないとは思うけど、そこまでキツイ言い方しなくてもいいじゃないかと、少しムッとする。
そして同意を得ようと、隣にいるの詩音の顔を見上げると、ものすごくバツが悪そうに、詩音はソッポを向いていた。
ああ、詩音も井上さんと顔を合わすのは、やっぱまだ気まずいんだ。
私はそんなことを考えながら、さっきまでの温もりを求めて、詩音の指を探す。
そして探り当てると、今度は自分の方から指を絡めていた。
グッと握り返してくれることを期待しながら…。
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