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付き合い始めてからの私たちは、同じバスケ部といっても、基本的には男女で活動時間が異なるので、なかなか一緒に居られる時間は少なかった。
平日は待ち合わせて一緒に帰ることはできても、時間も時間だし、ただ単に帰るだけ。
お互いゆっくり時間の取れそうなのは土日しかないんだけど、その土日も、弱いくせに弱いなら弱いなりの部活の試合相手がいるので、男女ともに練習試合も多く組まれてて、なかなか自由になる時間は少ない。
それに加えて詩音はトップクラスなんで、部活のオフの日には、塾に通ってたりする。
なので、二人で一緒に出かけるような時間はほとんどなく、平日部活帰りにファストフード店に寄ったり、夜にLINEを送ったり、電話で喋ったりするくらい。
でも、まあそれでも私は充分だと思ってる。
二人の気持ちさえ通じていれば。
「ねえ、アリス。詩音くんとは順調なの?」
学校の一大イベントの一つ、学園祭の近づいたある日。
部活がオフの日の放課後の教室で、歌恋が帰ろうとする私の制服の袖を引っ張って呼び止めた。
「えっ?なに?詩音?ふつーだよ、ふつー」
「そう?それならいいんだけど」
「なになに?言いかけてやめるのが一番気になる。なに?最後まで言ってよ」
何かが喉に引っかかったような喋り方をする歌恋に、不安になる私。
「いや、なんでもないんだけど。いやー詩音くんって、やっぱモテるみたいでさ。
あんたと付き合ってるって知らない子とかが、いろいろ言ってたからさ。“詩音くんカッコいい”とか、“彼女いないなら立候補したい”とかさ」
「ふーんそういうことね。
でもそういうことなら、大丈夫だと思うよ。最近も毎晩LINEで喋ってるし」
新たなライバルが出現したかもしれないという警告にも、さして気にしてなさそうに見えたらしく、私の顔を見つめていた歌恋は、急に真顔になった。
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