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「ねえ。一つ聞くんだけどさ。
あんたと詩音くんって、どこまでいったの?」
突然のゲスな質問に思いっきり動揺する私。
「どどどどういう意味?
遠出ってことだったら、少し前に隣町の水族館に行ったよ」
「バカにしてる?」
「…してません」
「正直に言ってみな?」
「手…手は繋いだよっ!この前。
こここ恋人繋ぎだってしたんだからっ!」
思いっきり動揺してしどろもどろになる私に、呆れ顔の歌恋。
ごめんなさい。私、こういうことは思いっきりオクテなんです。
下手くそなくせに中学からずっと部活一筋だった私は、こういう時、どうしていいか分かんない。
「てことは、キスもまだなのよね?」
「キッスですか…」
「“キッス”って言うな」
照れ隠しでふざけた私を睨みつける歌恋。
目が怖いんですけど。
私の大親友とも呼べる美香と歌恋のうち、私よりかなりオクテの美香と、恋愛面では二歩も三歩も先を行く恋愛マスターの歌恋。
私はその二人の間にいて、コウモリやカメレオンのように、双方の会話にそれぞれ合わせるスタンスでいた。
美香の前では、美香に合わせたピュアな恋バナ。
歌恋の前では、大人ぶってそれなりに恋愛経験がある素ぶり。
もちろん私自身に恋愛経験はほとんどないので、知ったかぶりなんだけど。
そして三人が揃った恋バナの時は、どっちつかずでボロが出ないように、じっと笑顔でニコニコするだけで黙っている事にしていた。
自分が当事者じゃなかったらそれでも良かったんだけど、いざ自分のこととなったら、そういう訳にもいかなくなった。
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