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「キッ、キスはタイミングだよねー。やっぱ。なんか詩音のやつ、ビビってんのかな。なんかタイミング合わなくてさ」
「ねえ、アリス。無理しなくていいから」
バレてますか。
バレてますね。
「あんたが恋愛経験乏しいのなんて、お見通しです」
ですよね。
「じゃあ、詩音くんとのキスもまだだし、当然その先も…ってことよね。
あ、そもそもあんた誰ともキスしたことないでしょ?」
「お、おっしゃる通りでございます」
私も観念して、素直に認めるしかない。
「もうすぐ学園祭だよね?」
「えっ?」
「もうすぐ学園祭だ、よ、ね?」
「はい?」
「言わんでも分かれ。てか、察しろ。
あんたたちはまず学園祭の打ち上げでキスするところからね?」
「そうおっしゃられましても…」
私はドギマギしながら、言葉を濁す。
どうしていいかなんて、分かんない。
誰かに教えてもらうものでもないし、ましてやママに聞くようなことでもない。
「何もしないでこのまま他の女の子に詩音くん取られてもいいの?
大丈夫。詩音くんは、何をすべきか、ちゃんと分かってっから」
「そういうものなの?」
「そういうもの。こういう時、女子はシチュエーションだけ準備したら、あとはドーンと構えてたらいいんだから。そしたら男子も女子に恥かかせないようちゃんとするって決まってるから」
「ふーん、そうなんだ。さすが恋愛マスター」
「てことで学園祭は、当日か、翌日あたりに雰囲気の良さそうな公園にでも誘いなさい。んで、ドーンと行ったら、あとは流れで」
歌恋は何やら往年の相撲取りのようなことを言いながら、具体的な作戦を授けてくれた。
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