アリスと詩音(過去編)

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「あのさ、詩音のクラスってさ、打ち上げいつなの?」 うちの高校は毎年、10月の第2週の金曜土曜が学園祭。 その本番も差し迫った水曜日から、生徒会の取り決めで、学園祭の直前準備のため原則部活動は休止となる。 私と詩音は、部活がオフになったので、校門を出た先の角で待ち合わせ、一緒に帰ることにした。 他愛のない会話に終始していたんだけど、私には歌恋に授けられたミッションがある。 いつそれを切り出すかを計ってたんだけど、なかなか勇気が出ない。 でもこのままじゃいけないと、信号待ちで立ち止まった際、隣を歩く詩音に何気ない風を装って尋ねてみることにした。 詩音をデートに誘い、なるべく自然に“いい雰囲気”のスポットに誘導するというのが、歌恋に授けられたミッション。 歌恋にバカにされないためにも、この程度は私だってできるってとこを見せつけてやらなきゃ。 「ん?ああ、うちのクラスの打ち上げは土曜の夜、カラオケボックス予約してるみたい。 うちのクラス、日曜は塾の奴も多いから、はなから土曜日一択だったよ。 アリスのとこは?」 「うちも土曜日の夜が本番の打ち上げだよ。でも翌日の日曜ももう一度集まって、みんなでボウリングに行こうってことになってるけど、私、そっちはパスかなー。 だって日曜は体育館は後片付けでまだ使えないからせっかく部活オフなのに、もったいないしさ。 で、あの…詩音は、日曜はなんか予定あるの?」 「いや、特に…」 「じゃ、じゃあさ。ふふ二人でどこか行こうよ。電車に乗って、ちょっと遠くにでも」 「んー、そうだなぁ。久しぶりに二人でどこか行こうか。 アリス、 どこ行くか考えといて」 「おっけー」 部活がない土日は、試験期間以外では珍しいので、これを有効活用しない手は無い。 私は学園祭のクラスの出し物で気が滅入っていたのが、少し晴れたような気がした。
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