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「ママが見に来たらどうしよう」
「え?アリス、親に教えたの?」
「教えてはいないんだけどさ。
保護者面談の日程とかのプリントをママに渡さずにカバンに入れたままにしてたら、夕べ勝手にカバンの中見られて、メイドカフェのプリントも発見された。
ウチの親、私にやたら過干渉なんだよなあ。特にママの方が」
メイドカフェの打ち合わせ内容が記されたプリントには、私がメイド服を着て立っている時間までバッチリ記載されてて、間違いなくママはそれを見てるはず。
だから、今この時間帯にやってくることは、十分に予想できる。
ビラを配りつつ、警戒しながら廊下をキョロキョロしていると、あまり見慣れない子がメイド服を着て、精力的に声をかけてビラを配っているのに気づいた。
私は、肘で隣の美香を突っついて尋ねた。
「ねえ、あれ…?」
私のアゴで指し示す先にいる姿を確認した美香は、何かを隠してたかのように少し動揺している。
「あ…、あれ? あれはトップクラスの井上さんだよ。
髪型もわざわざミッキーヘアって、すごく気合入ってるよね。昨日学校の後、わざわざ美容院に行って教えてもらったらしいよ」
「そうじゃなくて、なんでうちのクラスの出し物に、“あの”井上さんが参加してるの?」
「それにはまあ、いろいろありまして…。確かにあんたは嫌かもしれないし、黙ってたのは悪かったと思うけど…」
美香はきまり悪そうに、言葉を濁した。
そのあと細切れに聞いた話をまとめると、うちのクラスがメイド喫茶をすることに非常に強い関心を示した井上さんと、メイドのなり手不足に頭を悩ましていた美香らクラスの実行委員の双方の思惑が一致。
メイド5人中1人だけは『お試し参加枠』のイベント扱いして、クラス外からの参加を募ることにしたみたい。
因みに井上さん以外にも、もう1人お試し参加する人がいるらしい。
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