アリスと詩音(過去編)

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「なんで詩音がここに来るのよっ! 時間教えてなかったのにっ」 私が小声で詩音に詰め寄ると、「教えてもらった」と涼しい顔をしている。 私がチラッと美香の方に目をやると、美香は知らん顔でそっぽを向いて、鳴らない口笛を吹いていた。 美香だな? せっかく来たのを追い返す訳にもいかず、詩音のリクエストで仕方なくツーショットで自撮りする。 「これでいい? もう、このカッコ、かなり恥ずかしいんだからねっ」 そう言って照れる私に、詩音は耳元で囁く。 「メイド服、よく似合ってるよ。 あ、でもどっちかというと、メイドのタイツは黒より白の方が、俺は好みだけどな」 「はっ?キモっ」 私が“シッシッ”と犬を追い払うような素振りをすると、詩音も笑いながら反対方向に手を振って去っていった。 「んもう」 大きくため息を吐く。 みんなの手前、悪態をついたりイヤそうなフリをしたけど、来てくれて嬉しかったのも事実。 こんなカッコしてるけど。 一人ほくそ笑んでいたら、歌恋から授けられていたミッションを思い出した。 そうだデート、どこに行くかまだ伝えてなかった…。 慌てて詩音の去った方を振り返ると、その詩音が今度は井上さんに話しかけている姿が目に入った。 私の胸が少しザワつく。
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