アリスと詩音(過去編)

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公園に向かう坂道の途中で後ろを振り返ると、 夕暮れが近づいたせいか、いつもはウサギのように跳ねている白い波が、オレンジ色に輝いていた。 私は胸をドキドキさせながら、且つそれが悟られないよう、音を立てずに、さりげなく深呼吸を繰り返した。 ドキドキしてるのはもちろん、坂道を登っているからじゃない。この後のことを考えてしまっているからだ。 数分後。 ドキドキしながら坂道を登りきり、私は私が考えつくなかで、一番理想とする“ファーストキスの舞台”に、詩音を連れてくることに成功した。 後は頃合いを見て、歌恋のアドバイス通りに、コトを進めればいい。 えーと、後は『無言で彼の目を見つめる』と『タイミングを見て目を閉じる』だったっけ。 目を閉じたら、あとは流れに身を任せていればいいはず。 なんて言われましても。 いざとなると、目を閉じるタイミングが分かんない。 公園についていきなり、何もしないまま向かい合って目を閉じるのは、さすがにどうかと思うな…。 なんて考え始めたら、分かんなくなった。 急に不安になった私は、とりあえずベンチに座り、詩音とお喋りしながら“目を閉じる”タイミングを計ることにした。
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