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そう思ってしまったら最後。
昨日の学園祭の時からずっと気になってた質問を、思わず口に出してしまった。
「詩音、井上さんと仲いいんだね」
最初の着信画面を、偶然覗き見してしまったことがバレるかもしれないけど、感情を抑えきれなかった。
「えっ?あ…ああ。まあ中学も塾もずっと一緒だったしな」
「ふーん…。今でも一緒に写真撮ったりするくらいだもんね」
私は昨日の学園祭のメイド喫茶の様子を思い浮かべていた。
「ちげーよ。そんなんじゃないって…」
そのまま二人とも黙り込んでしまう。
“そんなんじゃない”って、どういう意味?
詩音にしてみたら、井上さんは昔からの友人なのかも知れないけど、彼女は詩音のことそう思って無いんだよ?
詩音は彼女の気持ちに気づいていないっぽいけど、そんな態度とってるから、私も井上さんも傷つけることになるんだよ?
だいたい彼女も彼女だよ。
詩音は私と付き合ってるって知ってるくせに、あからさまにメイド服着て詩音にアピールしたりして…。
あ。
二人は昔からの知り合いってことは、もしかしたら、井上さんも詩音の家に行ったことあるのかな?
頭の中に、色んな妄想がグルグルと渦を巻いて私をイラつかせる。
なんだかファーストキスの余韻なんか、どっかへ行ってしまった。
そして長い沈黙の後、私は口を開いた。
その私が導き出した答えは、自分でも意外なものだった。
「…いいよ。明日、詩音の家に行くよ」
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