アリスと詩音(過去編)

20/22
前へ
/212ページ
次へ
そう思ってしまったら最後。 昨日の学園祭の時からずっと気になってた質問を、思わず口に出してしまった。 「詩音、井上さんと仲いいんだね」 最初の着信画面を、偶然覗き見してしまったことがバレるかもしれないけど、感情を抑えきれなかった。 「えっ?あ…ああ。まあ中学も塾もずっと一緒だったしな」 「ふーん…。今でも一緒に写真撮ったりするくらいだもんね」 私は昨日の学園祭のメイド喫茶の様子を思い浮かべていた。 「ちげーよ。そんなんじゃないって…」 そのまま二人とも黙り込んでしまう。 “そんなんじゃない”って、どういう意味? 詩音にしてみたら、井上さんは昔からの友人なのかも知れないけど、彼女は詩音のことそう思って無いんだよ? 詩音は彼女の気持ちに気づいていないっぽいけど、そんな態度とってるから、私も井上さんも傷つけることになるんだよ? だいたい彼女も彼女だよ。 詩音は私と付き合ってるって知ってるくせに、あからさまにメイド服着て詩音にアピールしたりして…。 あ。 二人は昔からの知り合いってことは、もしかしたら、井上さんも詩音の家に行ったことあるのかな? 頭の中に、色んな妄想がグルグルと渦を巻いて私をイラつかせる。 なんだかファーストキスの余韻なんか、どっかへ行ってしまった。 そして長い沈黙の後、私は口を開いた。 その私が導き出した答えは、自分でも意外なものだった。 「…いいよ。明日、詩音の家に行くよ」
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

134人が本棚に入れています
本棚に追加