プロローグ

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ママと“お父さん”が離婚したのは、私が小学校の低学年の時。 それからすぐ“お父さん”は再婚したので、それから数年間は私が“お父さん”と会うことは無かった。 ママもその後おとーさんと再婚したので、もう我が家と“お父さん”とが再び関わりを持つことは無いはずだった。 その関係が変わったのは、私が中学二年生の頃。 弟の悠斗がまだ1歳になったばかりの我が家に、ママのママである、おばあちゃんから電話があった。 その後、おばあちゃんと、おとーさんとママ、それに“お父さん”との間でどんな話し合いがなされたのかは知らないし、教えてもらってもいない。 後でおとーさんに聞かされたのは、“お父さん”が再婚した相手の人とも最近離婚したこと、その相手の人との間に子供はいなかったので、一人ぼっちになってしまった“お父さん”が、唯一の子供である私に、恥を忍んて会わせてほしいと、おばあちゃん経由で頼んできたということだけ。 私と“お父さん”が会うことをママは反対したらしいけど、最終的に私の気持ちを確認し、おとーさんが下した決断に、ママも同意した。 おとーさんと“お父さん”は同じ会社に勤めていて、直接の接点はないけど、お互いなんとなく知っているみたい。ちなみに、おとーさんは今は支店長になってて、それなりに社内では知られた存在みたい。 ママの出した条件で最初の数年間は、おとーさんの大学の同級生の弁護士さんが、面会の最初と最後に立ち会ってたけど、私が高校二年生になった頃、それも無くなった。 今は、2ヶ月に一度、指定された待ち合わせ場所で二人で落ち合い、一緒にレストランでご飯を食べたり、向こうの“おばあちゃん”ちに行ったり。 一緒にいる時間は、大抵午後1時から午後5時までの4時間程度なので、遠出することはほとんどない。 私は電話の受話器を左手に持ち、ポケットからスマホを取り出して、右手でおばあちゃんから聞いた場所と時間をスケジュールに打ち込む。 「…分かった。じゃあねー」 そう告げると、「ママに心配かけないよう、ちゃんと勉強するのよ」と言おうとしたおばあちゃんが言い終わらないうちに、受話器を置いた。 まったくもう。 ママとおばあちゃんはやっぱり似た者親子だ。
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