プロローグ

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「ところでさ、おとーさんの単身赴任って、いつまでなの?」 「前の支店からだと単身赴任も2年を超えたけど、今の支店に赴任してまだ2ヶ月だからね。まだまだ帰ってこれないと思うよ」 微妙な雰囲気に包まれた夕食にストレスを感じていた私は、話題を変えようと、ママにおとーさんの仕事のことを聞いてみた。 おとーさんは、何年か前から支店長になって、支店長になると同時に単身赴任になった。 そして、今年の夏から、支店長として二つ目の支店である、西町支店の支店長になっている。 西町支店っていうのは、ママとおとーさんが出会った支店なんだって。 その店に何年ぶりかで、今度は支店長として戻ってこれたおとーさん。 おとーさんの勤める帝産銀行の中でも、結構規模の大きな支店らしくて、西町支店の支店長になったと聞いた時、帝産銀行OGのママも、すごく喜んでいた。 因みに、“お父さん”も帝産銀行に勤めているんだけど、どこの部署で働いているのかは、私も知らないし、“お父さん”も、私が以前聞いた時も教えてはくれなかった。 おとーさんやママは知ってると思うけど、二人に聞くのも気がひける。 てか、ママは絶対教えてくれないと思う。 それが分かってるから聞かないけど。 そんなこんなで、不自然なテンションの晩御飯も終わり、家族に微妙な空気をもたらす、私と“お父さん”の面会日が終わろうとしている。 明日からはおそらくママも、いつも通りの教育熱心なママに戻り、私に「勉強しろ勉強しろ」とプレッシャーをかけるんだろう。 そう思うと、“お父さん”との面会日も、悪くないのかもしれない。 ママには絶対言えないけど。
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