アリスと詩音(過去編)

1/22
133人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ

アリスと詩音(過去編)

一年前。 私が二年生の時の体育祭。 招集がかけられて集められた待機場。 午後の部のメインイベント、部活対抗リレーのメンバーに選ばれていた私は、緊張でガチガチになっていた。 部活対抗リレーは、各部がユニフォームを着て、部活特有の道具や動作をしながらリレーをする、体育祭のメインイベントの一つ。 各部がプライドをかけて、ガチで速さを追求する部と、笑いを取りに行く部とに分かれる。 私の所属するバスケ部はというと、リレーバトンの代わりにボールをドリブルしながら走るというのが暗黙のルール。 でもそんなハンデを抱えながら、ガチで勝ちに行くのが伝統だった。 そして、なぜかそのメンバーに私が選ばれてしまった。 部員の中でも足だけは速い方なので、仕方ないといえば仕方ない。 でも試合だってほとんど出たことないのに、こんな大勢の前でドリブルしながら走るなんて…。 部活対抗リレーは、陸上部は普通に走るのが“仕事”だし、野球部も単にバットをバトンがわりに持って走るだけと、走りに専念できる部が優勝候補なのは仕方ない。 水泳部も陸上でできることは限られるので、ビート板を持ってただ走るだけでいいんだけど、そのかわり水着姿だ。 大勢の観衆の前で水着姿になるなんて、私には到底できない。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!