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アリスと詩音(過去編)
一年前。
私が二年生の時の体育祭。
招集がかけられて集められた待機場。
午後の部のメインイベント、部活対抗リレーのメンバーに選ばれていた私は、緊張でガチガチになっていた。
部活対抗リレーは、各部がユニフォームを着て、部活特有の道具や動作をしながらリレーをする、体育祭のメインイベントの一つ。
各部がプライドをかけて、ガチで速さを追求する部と、笑いを取りに行く部とに分かれる。
私の所属するバスケ部はというと、リレーバトンの代わりにボールをドリブルしながら走るというのが暗黙のルール。
でもそんなハンデを抱えながら、ガチで勝ちに行くのが伝統だった。
そして、なぜかそのメンバーに私が選ばれてしまった。
部員の中でも足だけは速い方なので、仕方ないといえば仕方ない。
でも試合だってほとんど出たことないのに、こんな大勢の前でドリブルしながら走るなんて…。
部活対抗リレーは、陸上部は普通に走るのが“仕事”だし、野球部も単にバットをバトンがわりに持って走るだけと、走りに専念できる部が優勝候補なのは仕方ない。
水泳部も陸上でできることは限られるので、ビート板を持ってただ走るだけでいいんだけど、そのかわり水着姿だ。
大勢の観衆の前で水着姿になるなんて、私には到底できない。
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