プロローグ

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「アリス!聞こえてるの?おばあちゃんから電話だって!」 階下からママが大きな声で私を呼ぶのが聞こえた。 たまたま曲と曲の切れ目で、その大きな声が耳に入ってきた。 私は仕方なく、その辺りにあった適当な紙を栞代わりに問題集に挟み、ヘッドフォンを外すと、とりあえず「はーい」と大きな声で返事をしてから階段に向かった。 ママのあの声の様子だと、私が気づくまで何度も呼んでいたに違いない。 絶対怒ってるよなぁ そう思う証拠に、ママは普段は私のことを“あーちゃん”と愛称で呼んでいるのに、さっき呼ばれた時は名前で呼ばれた。 怒ってる時は大抵そうなるんだ。 「ごめんごめん。勉強で集中してたから気づかなかったよ」 「へえ、どうだか。本当はヘッドフォンで大きな音で音楽聴いてたんじゃないの?」 バレてる…。 ママ、もしや、私の部屋にいつのまにか監視カメラつけた? 私は首をすくめて、とぼけながら受話器を受け取った。 私には、“おばあちゃん”が3人いる。 今回の電話は、母親方のおばあちゃんからだった。 一番長い付き合いで、しばらく一緒に住んでいた事もある。 そのおばあちゃんからの電話の要件は、聞かなくても想像がついた。 『お小遣いをあげる』とか、『カルチャー教室で作ったおはぎが沢山あるから取りに来て』とかの類の電話では、間違いなく、ない。 その理由は… 前回の“その”電話から、ちょうど二ヶ月経ったから。 あと、受話器を渡した途端、それまでそこにいたはずのママがリビングから消えたのも、それを物語っている。 やっぱ私がこの話をしてるとこ、聞きたくないんだろうな。 もしかしたら、私に気を使ってんのかもしれない。 私は、二ヶ月に一度の頻度でかかってくるおばあちゃん経由でのその電話に、家族がギクシャクすることへのストレスを感じながら、受話器を耳に当てた。 「もしもし。アリスです…」
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