美人秘書からの極秘指令

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美人秘書からの極秘指令

 バスルームから出ると、プライベート用のスマホの着信ランプが光っていた。 『譲ちゃん。今夜、終業後に会える?』  短いメール。それでも、想いは十分伝わる。  優華は、わが社が経営する会員制高級クラブのママだ。ビル6階のワンフロアに彼女の店があり、他の階は店の会員限定で利用できる宿泊施設や、賃貸個室になっている。そして、ビルの最上階15階には、彼女の住まいがあり、彼女に招かれた特別な顧客だけが、足を踏み入れることを許されている。  俺は――彼女のプライベートなパートナーだが、だからと言って、好き勝手に出入りできる訳ではない。  優華(こいびと)に会いたい夜は、事前に連絡が必要だ。彼女から会いたい夜も、然り。不自由なようだが、2人の関係を続けるために必要な、これは厳格なルールなのである。  サックスブルーのシャツと、定番のダークグレーのスーツに袖を通す。  身支度を済ませると、部屋を出る前に返信した。 『大丈夫だ。終わったら、連絡してくれ』  店の終業時間は、深夜2時。後片付けや従業員を送り出して、戸締まりを済ませると、彼女から連絡がくる。それまで俺は、ビル1階の警備室で待機するのが常になっている。  エレベーターで地下駐車場に降り、愛車のジャガーで出勤する。途中、コーヒーショップに寄って、チキンベーグルとサラダ、『本日のコーヒー』のモーニングセットを腹に収める。  車に戻ると、待ち構えていたようにスマホが鳴った。優華からの返信だ。 『ありがとう。待ってるわ(ハート)』
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