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自分の意思とは正反対に、まぶたが勝手に閉じてゆく。凍えた手足の感覚が戻ってくるようなジリジリ感が広がる、唇を動かそうとする、まだこの人のそばから離れたくなくて。
「…………」
だが、もう呼吸さえもできなかった。
(伝えたいのに、伝えられないまま……。
このまま……死んでしまう)
消えゆく運命に抗おうと、意識を呼び戻そうとした。
(この人に私は伝えたーー!)
その時だった。魂を消滅させるような激痛が胸をひどくえぐったのは。輪廻転生も叶わない。どこの世界からもいなくなる。もう二度と誰とも会えない。これが本当の死というのだろう。
そうして、静寂が訪れた。痛みも消え去った。そばにあった温もりもなくなった。無の世界がやってきた。死の淵に落ちてゆくしかない闇の中で、もう一度だけ強く願う。
(私は伝えたいことが、あなたにあった。
だから、それを伝えたい。
どうしても……伝えたい)
自分という霧がくるくると回るように消えゆく中で、呪文のように唱え続けていた時、凛とした優しい声がどこからか聞こえてきたのだ。自分を救うと言って。
『なんてことでしょう。……とは、私は許せません。……。自ら、この呪いを解く意思があるのなら、その機会と方法を与えましょう。今から5千年後に……うでしょう。……18の誕生日までに……』
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