差し伸べられる手

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差し伸べられる手

 ーーーー突然、激痛が走った。体をバラバラに(くだ)くような、木の(くい)で打たれたような衝撃。それが胸を(おそ)う。さっきまで当たり前にあった景色も感覚も何もかもを狂わした。 「っ!」  清流に泥水という毒が混じるように、この身が(おか)されてゆく。鎖で拘束するような(しび)れが略奪する、体中の正常を。 「……くっ!」  全ての記憶が、思い出が、砂が風に吹かれるように消え去ってゆく。急速に意識が遠のき始めた。 (た、大切な何かを……)  失いたくないのに。未来を歩きたいのに。それが(かな)わない。どうにもならない。青天の霹靂(へきれき)という言葉が似合う運命の終焉(しゅうえん)。  かろうじて残っている感触。肌に伝わってくる、誰かの温もり。もう少しでこの人の何もかもを感じ取れなくなるかと思うと、どうしてもそれを食い止めたくて、その人の名を呼ぼうとするが、 「…………!!」  声ももう閉じ込められてしまった。最後ではなく、人の死を表す最期(さいご)(おり)の中に。 (つ、伝えたい……。  でも……く、苦しい……) 「っ!」     
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