プリズムの瞳

1/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

プリズムの瞳

  最初にそれを見たのは、子どものころだ。  技術職の父親に連れられて、科学技術展に出かけた時のことだった。  骨組みだけのそれは、壇上に立つ人間の声に反応し、その体を動かした。僕はそれを不気味だと思った。  それから何年かして、ただの骨組みだけだったそれは、アンドロイドとして完成し、市場に出回った。  けれど、僕はあの時見た骨組みの印象が強くて、アンドロイドが動いているのを見ると、その内側にあるだろう骨組みを想像するようになってしまった。情けない話だけど、それがトラウマになっていたりする。  そんなアンドロイドの値段設定にはいくつか種類があって、見た目だけでなく、搭載されているAIの質によってもその値段は変わった。  高いものだと、高級車が買えるほどのものもある。  見た目のカスタマイズはあとからできるけれど、搭載されたAIは不具合などを解決するための更新以外は、設定をいじることは許可されていない。だから、もっと質のいいAIをとなると、買い替えなくてはいけなくなる。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!