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和真は天文学部の部室に向かった。
天文学部の部員と話をして待たせてもらったが、教師が現れる気配はない。
ここに至って、和真はさすがにおかしいと思い始めていた。
「先生、今日は来なかったな。今日は天体観測するって言ってたのに」
「天体観測?」
「夜、屋上で星を見るんだよ。うーん、今回は部員以外の生徒も来るって言ってたのに」
天文学部の生徒が不思議そうにしながらも「おかしいな。でも先生がいないなら今日は解散」と言って帰っていく。部活動も終わり時刻は夜に入ろうとしている。
和真は人気が無くなった校舎を歩きながら、感覚を研ぎ澄ませた。
あまり知られていないが、猫も犬程ではないが嗅覚が鋭い。特に今日は満月なので、感覚は鋭くなっている。
かすかに感じる、幸宏の匂い。
彼はまだ校舎にいる。そう、和真は確信した。しかし匂いの元を辿ろうとすると、近付く程に気配が拡散する。人為的に隠されているように。
狗乃森が絡んでいるせいかもしれない。
奴は怪しい妖術の類いを使う。
このまま捜索を続けるより、奴が出てくるのを待とう。
そう和真は決めた。
妖怪である奴の活動時間は夜。月が登る頃。
学校に人がいなくなってから出てくる筈だ。
和真は猫の姿で物陰に隠れて、教師達が戸締まりして学校から去るのを待った。
やがて学校から灯りが消える。最後まで残業している教師がいるのか職員室の灯りはなかなか消えなかったが、デスクライトだけの状態になる。
暗くなったグラウンドに現れる人影。
狗乃森だ。
猫の姿から人間の姿に戻った和真は彼の前に立った。
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