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03 一難去ってまた一難
結局あの夜は遠藤の部屋に戻った後、満月の影響でもう一度猫になったみたいだ。寝てたから分からんけど。遠藤は俺に遠慮して部屋の外の廊下で寝たらしい。
衝撃の告白のせいで混乱した俺は遠藤の両親の手前、外面を取り繕うので精一杯だった。運良く次の日は土日だったので、心の整理をする時間はあった。
忘れよう……。
きっと遠藤も満月で変な風に興奮してたんだ。
ある意味で間違っていないはずの解釈だったのだが、月曜日、学校に向かう途中の俺は曲がり角で遠藤の姿を認めてギョッとした。
「おはよう、須郷」
「お、おはよう遠藤。いったいどうしたんだ?」
「別に。一緒に登校しようと思っただけだ。迷惑だったか」
「い、いや」
迷惑っていうか、気まずいんだよ!
俺の心の声を知らない遠藤は、表情を変えずに会話を続ける。
「和真(カズマ)だ」
「は?」
「呼び捨てでいい。僕も幸宏(ユキヒロ)と呼ぶから」
いやいやいや! いつの間に俺とお前は呼び捨てする中になったんだよ。確かに泊まりに行くくらいには親しくなったけどよ。
反論しようとしたが、その時ちょうど遠藤の友人が近付いてきて、朝の挨拶が始まったので、有耶無耶になってしまった。遠藤の友人は不思議そうに俺を見る。俺も何でこいつと一緒にいるのか聞きたいね。はあ、どこで間違ってしまったんだろう。
「幸宏。僕は一度決めたら翻さないんだ」
教室が別なので階段の前で別れる間際、遠藤は俺に向かって意味深なことを言った。それってどういう意味なんだ……ブルブル。
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