05 猫たちの時間

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05 猫たちの時間

 満月の日、和真は同じ猫族の幸宏の様子が気になっていた。  本当は「大丈夫か」と声を掛けたい。けれど、下手に声を掛けると幸宏のプライドを傷付けそうだ。まだ友人になって1ヶ月経つか経たないかだが、何となく、幸宏はプライドが高い性格だと感じ取っていた。  クラスが違うと幸宏との接点が少ない。  時折、遠目に見掛ける幸宏の様子はいつも通りだったので、和真はひとまず安心していた。ここ最近、話ができていないが、今日こそは話をしようと決意する。  放課後真っ先に幸宏のクラスを訪ねたが、そこに幸宏の姿は無かった。 「須郷? あいつなら先生の用事だとかで授業の終わりと同時に出て行ったぞ」 「戻ってくるか」 「えーと……鞄ないな。先生の用事が終わったら直接帰るんじゃないか」 「先生は誰だ?」 「山川先生」  同級生の会話で情報を仕入れた和真は、山川先生を探しに職員室へ向かった。  職員室で適当な教師を捕まえて話し掛ける。 「すいません、山川先生はどちらにいらっしゃいますか」 「山川先生?」  若い女性教師は首を傾げた。 「その辺で休憩されてるんじゃないかしら。山川先生の担当の部室に行って待ってみたら。今日は天文学部は活動してる日だし」
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