プロローグ

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プロローグ

「高橋さん!結婚してください!!」  開口一番。  正門に足を踏み入れると同時に、一人の少女がそんなことを叫んだ。 「……今日はどうしたんですか、桜庭さん」  対して俺、高橋涼太は、いたって冷静に言葉を返した。  何故俺がこんなに冷静なのか、それは俺の日常を目の当たりにしていけば、ご理解いただけるかと思う。 「今日は私の十六歳の誕生日なんです!高橋さん知ってますか?女性は十六歳になったら結婚できるんですよ!というわけで私と結婚してくださいはいではこちらの婚姻届にサインと印鑑を!」 「うん待て待て取り敢えず落ち着こうか」  一息で良く分からないことをペラペラと話したこいつに、相変わらず恐怖を覚える。  ……婚姻届も、ガチものだし……。  ――!あぁ、紹介が遅れたな。  彼女の名前は、桜庭麗華。現在俺の二つ年下の高校一年生だ。  こんな理解不能な発言をする彼女だが、学校では教師を含め全校生徒の憧れの的だ。  容姿端麗・成績優秀・品行方正。教師の間では、こいつの話題が持ちきりだし、生徒もこいつが歩けば振り向くくらいで。……しかも、いいとこのお嬢様だ。  ――本来なら、平凡な俺とは別世界の人間なのだが……、……何故こうも毎日毎日突っかかってくるようになったのか、さっぱり訳が分からない。 「高橋さんどうしたんですか?急に黙り込んで。何か考え事ですか?私のことですか!?わ~、嬉しいです!!私は常に高橋さんのことしか考えていないんですけどね!もうこれって両想いですよね!?というわけで結婚しましょう!!」 「お~、落ち着いてな~?」  何も言ってねぇだろ俺。  いつまでも変わらないこの現状に、俺は「はぁ……」と溜息を吐く。  こいつに突っかかられるようになったのが、大体半年前くらいなのだが……、……キッカケなんて、ちっとも見当がつかない。  ――まぁ、少しの間だけ、俺達の物語に付き合ってくれたら幸いだ。
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