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小学六年の夏から僕は夢を見ている。現実と同じように生活する夢。つまり明晰夢を見ている。〈現実〉では幼なじみで彼女の夕と過ごし、〈夢〉ではたくさんの男友達と過ごしている。
あくまで僕が分かりやすくするために〈夢〉と〈現実〉で分けている。どちらが〈夢〉でどちらが〈現実〉だろうとさしたる問題ではない。
いつも通り誰に説明するでも説明を考えながら待ち合わせ場所に向かう。信号が赤になり、足を止める。すると、後ろから衝撃を受ける。
「痛いよ。それはやめようよ。」
「こうでもしなきゃ君は目が覚めないでしょう?」
彼女はそう言ってにっこり笑う。
夕は黙っていれば綺麗に見える。街にいるすべての人の目を釘付けにしているだろう。
「今日は何の授業があったっけ?」
僕がそう訪ねると彼女は何故か得意気に話す。
「国語と数学と英語はあったはず。あとは覚えてない。」
「それ得意気に言えないでしょ。」
僕は呆れてしまう。だけど同時に安堵してしまう。彼女は変わらない。それだけで笑みがこぼれる。『何笑ってるの?』と聞かれたが、何も答えなかった。
これが僕の〈現実〉だ。
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